意外と知らない!?保税運送について解説します!
皆さんは「保税運送」という言葉をご存じでしょうか。
「外国貨物を運送すること」ということはわかっていても、
「どんな手続きがいるのか」
「保税運送には何が必要なのか」
「どういうときに保税運送するのか」
など、疑問に思われる方も多いと思います。今回はこの「保税運送」についてご紹介したいと思います。
保税運送とは
外国貨物を保税地域から別の保税地域に運送することを言います。業界ではOLT(オー・エル・ティー、Over Land Transportの略)などとも言われます。
●外国貨物(≒保税貨物)
- 外国から日本へ到着した貨物で、輸入通関前のもの
- 日本から外国へ船積み予定の貨物で、輸出通関後のもの
輸入貨物は関税・消費税を納付して初めて輸入許可となることから、外国貨物は「関税・消費税の納税を保留した状態」として「保税貨物」とも呼ばれます。「外国貨物」と「保税貨物」はほぼ同義と考えてよいと思います。
●保税地域
外国貨物を置くこと等について税関から許可を受けた場所です。
外国貨物は税関の管理下に置かれており、その取扱いには厳しい制約が設けられています。
具体的には、ラベルの貼り付けや貨物の仕分けなどの作業をするにしても税関へ申請を行わなければなりませんし、外国貨物のまま保税地域に置いておける期間も、保税地域の種類により原則1ヵ月~3か月という期間が定められています。
保税運送ではどんな手続きが必要?
保税運送は、基本的に「通関前の輸入貨物」を運送する際に必要な手続きです。(輸出許可を受けた貨物の運送については後述いたします。)
税関に対して「保税運送申告」を行い、「保税運送承認」を受ける必要があります。申告内容としては、以下の情報になります。
- 輸入者名
- 運送の目的
- 発送地
- 到着地
- 貨物個数・重量
- 金額
- HSコード
この手続きは、NACCSというシステムを利用して電子的に行う場合がほとんどです。承認を受けると、「保税運送承認通知書」が出力されるので、この通知書をドライバーに渡し、貨物とともに運送します。
保税運送申告にはなにが必要?
通常の輸入申告に必要な書類と同様です。
- インボイス
- パッキングリスト
- B/L
- Arrival Notice
保税運送申告でも税関の審査、現物検査はあるの?
あります。
通常はNACCSにより送信された申告内容の審査のみで承認が下りることがほとんどですが、ごく稀に保税運送申告においても現物検査になることがあります。現物検査となった場合、「K 要確認」の文字が印字された保税運送承認通知書が出力されます。
この通知書でもって運送を行い、発送地から到着地までの運送途中で税関に立ち寄って検査を受けることになります。保税運送申告における検査は、基本的には大型X線検査のようです。
どんな時に保税運送するの?
頻度として最も多いのは、貨物を仕分けるためにコンテナヤードからCFS倉庫へ運送するパターンです。複数荷主の貨物が混載されたコンテナの場合、コンテナヤードからCFS倉庫まで保税運送を行い、CFS倉庫においてデバンニング(コンテナから貨物を荷下ろしすること)、そして荷主ごとに貨物を仕分けてから輸入申告するのが一般的です。
これ以外のパターンとしては、貨物内容を点検してから輸入申告したい場合や、輸入申告のために必要な手続き(例えば食品衛生法に基づく分析のための見本の持ち出しや、高圧ガス保安法に基づく高圧ガス検査を受けるためなど)のために保税運送を行うことがあります。
<用語の説明>
●CFS倉庫
CFSとはコンテナフレイトステーションのこといいます。
コンテナに貨物を詰める「バンニング」、コンテナから貨物を荷下ろしする「デバンニング」などの作業を行う倉庫のことです。CYと呼ばれるコンテナヤードにおいては、これらの作業はできないため、CFS倉庫に運んでから行うことになります。
輸出許可を受けた貨物をCFS倉庫からコンテナヤードまで運送するときの手続きは?
輸出許可を受けた貨物は「外国貨物」ですので、これをコンテナヤードまで運送するのは「保税運送」に当たります。しかしながら、輸出貨物の場合は別途保税運送申告の必要はなく、「併せ運送」という形で運送されます。
実務上は、NACCSを利用した通常の「輸出申告」を行うと、これに併せて「保税運送申告」も行ったことになっており、輸出許可と同時に保税運送承認も受けたことになっております。輸出許可時に出力される「輸出許可通知書」の下の方に「保税運送承認期間」の記載があるのはそのためです。
ただし、この輸出併せ運送は、あくまでも予定船舶に貨物を積み込むための運送について承認されたものであり、この期間内であればどこへでも運んでOKというわけではありません。
まとめ
いかがでしたか?通関業者でもない限りあまり気にすることない「保税運送」という手続きについて、少しイメージができましたでしょうか。
手続き自体はそれほど難しいものではないですが、外国貨物に関わるため非常に重要な手続きです。安全かつ適正なお手続きは、ぜひ当社までご用命ください。