毒物・劇物を輸入する際の注意点について解説します!
化学品を輸入する際には様々な国内法の規制を受けますが、その中でも比較的よく目にする法令として、「毒物及び劇物取締法」があります。毒物及び劇物取締法において「毒物」「劇物」として指定されている化学物質は、適正な手続きを行わなければ輸入することができません。
今回は、毒物・劇物を輸入する場合の注意点についてご紹介したいと思います。
毒物及び劇物取締法とは?
一般に流通する有用な化学物質のうち、主として急性毒性による健康被害が発生するおそれが高い物質を毒物又は劇物に指定し、保健衛生上の見地から規制する法律です。
毒物・劇物とは?
「毒物及び劇物取締法」で指定されている化学物質のことです。暴露すると人体への健康被害が生じる毒性の高い化学物質が指定されており、毒性の強さに応じて「特定毒物」「毒物」「劇物」にそれぞれ指定されています。(毒性の強さは、特定毒物 > 毒物 > 劇物 となります。)
毒物・劇物を輸入するには?
販売又は授与の目的かどうかにより、手続きが異なります。
ただし、いずれの場合であっても「特定毒物」については、原則輸入できません。
販売又は授与の目的で輸入する場合
「毒物劇物輸入業登録票」の取得が必要です。申請先は、毒物・劇物を輸入しようとする営業所が所属する都道府県庁の薬務主管課になります。登録票が無い状態では輸入申告ができないため、輸入予定貨物が毒物・劇物に該当するかどうかは、現地からの船積み前に必ずご確認をお願いします。
注意① 営業所ごとに登録票が必要です
毒物・劇物の輸入業務を行っている営業所の住所で登録票を取得する必要があります。よくある勘違いとして、本社住所の登録票を持っていれば、その登録票を使用してどこの営業所でも輸入できると思ってしまいがちですが、これは不可です。
税関の審査においては、インボイスとB/Lの「輸入者住所」と毒物劇物輸入業登録票の「営業所の所在地」が一致していることを必ず確認されます。不一致の場合は許可が下りません。
注意② 品目ごとの登録が必要です
営業所ごとに登録が必要であることは先述の通りですが、「毒物劇物輸入業登録票」においては輸入しようとする毒物・劇物の品目ごとの登録が必要です。登録されていない毒物・劇物は輸入できません。登録票は持っているが、輸入しようとする貨物が品目登録されていなかった場合は、当該登録票に対して品目追加の手続きを行っていただき、手続きが完了してからの輸入申告となります。
<補足>
国内において毒物・劇物を他者に販売・授与する際に必要な「毒物劇物一般販売業登録票」は、品目に特に制限が無く、毒物・劇物全般を販売することができます。このことから、「毒物劇物輸入業登録票」も品目の制限が無いと勘違いされることが多いですが、実際には取り扱いが異なり、輸入しようとする毒物・劇物の品目ごとに登録が必要です。
また、「毒物劇物一般販売業登録票」では輸入はできませんのでご注意ください。
販売又は授与目的以外で輸入する場合
輸入しようとする毒物・劇物を自社製品の原料として全量自家消費する場合や、試験研究、社内見本用として使用する場合など、以下に掲げるような条件に合致する場合には、地方厚生局より「輸入確認証」を取得することで通関が可能です。輸入確認証とは、かつて薬監証明と呼ばれていたものです。
- 個人使用のために輸入する場合
- 医師等が治療に用いるために輸入する場合
- 臨床試験に用いるために輸入する場合
- 試験研究等を目的に輸入する場合
- 展示会用に輸入する場合
- 再輸入の場合
- 自社製品用の原料として消費するために輸入する場合
- 原薬のサンプルを譲渡するために輸入する場合
- 日本で開催されるスポーツイベントで使用するために輸入する場合
- 新型コロナウイルス感染症の対策として、自社内で使用することを目的として抗原検査キット等を輸入する場合
輸入確認証の申請は、毒物劇物輸入業登録票の取得に比べて比較的簡易な手続きで済みますが、輸入の都度手続きが必要なのでご注意ください。
まとめ
世の中に流通している有用な化学物質の中には、毒物・劇物に該当するものも数多くあります。これらは、適正な手続きさえ行っていれば輸入は難しくありません。ただし、貨物が日本に到着してから当該貨物が毒物・劇物であることが発覚した場合には、登録票の申請から手続き完了までにどうしても時間を要してしまい、リードタイムが長くなってしまいます。
これまでに実績のない化学品の輸入をご検討の際は、ぜひお気軽に当社までご相談ください。経験豊富な担当者が適切にご案内をさせて頂きます。