そもそも通関って何?今さら聞けない素朴な疑問を解決!
日本から海外へモノを輸出するとき、もしくは海外から日本へモノを輸入するとき、「通関手続き」が必要であることはご存じでしょうか。
- 通関…。聞いたことはあるんだけど、通関ってどういうこと?
- 自分の会社も通関手続きは必要なの?
などなど、意外とよくわからない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、物流・海運のプロフェッショナルの当社が通関の基本をお伝えします。
1.通関とは?簡単に言うとどういうこと?
通関とは、「こういうものを、これだけの数量、この金額で、ここに向かって輸出(輸入)します」という内容を税関に対して申告し、許可をもらうための手続きのことです。
■通関とは
・送るもの(輸入するもの)【品物】
・数量
・金額
・輸出先(輸入先)
を税関に申告して許可をしてもらうこと。
1-1.勝手に海外に持ち出したり、海外のものを日本に持ち込むのは厳禁!
あまり馴染みが無いかもしれませんが、未通関の貨物を勝手に海外へ持ち出し、もしくは日本へ持ち込んでしまうと、「密輸」となり重大な法令違反となってしまいます。
海外旅行から日本へ帰ってきたとき、手荷物や現地で買った土産物などを記入する小さな紙を渡されたことはありませんか?あれも立派な通関手続きです。旅行者用に簡易なものとなっていますが、日本に持ち込むものを税関に対して申告しているのです。
2.貿易取引の通関手続き
さて、実際の貿易取引に伴う通関手続きは、上記のような小さな紙一枚だけではできません。貨物の種類等に応じて、必要な書類を揃えて税関へ提出しなければなりません。輸入であれば、関税、消費税等を納税する必要もあります。今回は、こういった通関に関係する基本的な知識をご紹介したいと思います。
2-1.通関にはどんな書類が必要?
通関に必要な書類は、輸出と輸入で異なります。また、輸出入する貨物の種類によっても必要な書類が変わります。
2-1-1.<輸出>
Invoice(仕入書)
Packinglist(梱包明細)
+
商品説明書(化学品の場合は100%の成分表+用途の確認)
必要なライセンス(輸出貿易管理令等に該当する場合)
2-1-2.<輸入>
Invoice(仕入書)
P/L【Packinglist】(梱包明細)
B/L【Bill of Lading】(船荷証券)
A/L【Arrival Notice】(貨物到着案内書)
+
商品説明書(化学品の場合は100%の成分表+用途の確認)
必要なライセンス(他法令に該当する場合)
※ここでいう「他法令」とは、「関税関係以外の法令で、輸出又は輸入に関して許可承認等を定めたもの」を指します。
3.通関手続きではどのような法令に気を付ければ良い?
に注意する必要があります
3-1.輸出貿易管理令ってどんな法令?
3-1-1.兵器などに転用可能できる貨物・技術の輸出の規制
武器そのものの輸出規制、及び大量破壊兵器や通常兵器の開発などに転用可能な貨物、技術の輸出を規制しています。この規制は、先進国を中心とした国際的な枠組み(国際輸出管理レジーム)に基づいています。輸出貿易管理令に該当する貨物は、原則として経産省へ申請を行い、ライセンスを取得しなければ輸出できません。
輸出貿易管理令の該非を検討する際は、「兵器等に転用できうるものかどうか」という視点で考えることが重要です。一般の工業用途だから非該当だろう、という考え方は誤りです。輸出貿易管理令で定められたスペックを持つ貨物は、実際の用途がどうであれ、輸出貿易管理令に該当することとなります。不安であれば、経産省へ相談された方がよいでしょう。
3-1-2.安全保障関連以外の貨物の輸出の規制
安全保障関連以外の貨物の輸出を規制しています。化学品に関係するものでは、例えば以下のようなものが規制されています。(あくまでも一例です。この他にも多数の規制物質があります。)
<麻薬向精神薬原料>
濃度50%を超えるトルエン、アセトン、メチルエチルケトンなどや、濃度10%を超える塩酸、硫酸などが規制されています。またこれらを含む混合物も規制の対象です。
3-2.輸入関係の他法令
化学品の輸入通関に関係する主な法令としては、以下のようなものがあります。
- 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(通称 化審法)
- 毒物及び劇物取締法
- 高圧ガス保安法
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称 薬機法)
- 麻薬及び向精神薬取締法
- 肥料取締法
- 農薬取締法
- 食品衛生法
輸出貿易管理令や輸入の他法令は、化学物質名で該非を判断するものもあれば、用途や使い方、スペック等によって該非を判断するものもあり、一から調べて完璧に対応するのは至難の業です。
しかし、これらはすべて輸出入者の責任で必要なライセンス等を揃え、法令をクリアしている(必要な手続きを取っている)ことを税関へ示す義務があります。知らなかった、では済まされず、輸出入の許可が下りないばかりか、重大な法令違反を問われるリスクもあります。
4.どんなものでも関税はかかるの?
日本から貨物を輸出するときは、関税はかかりません。(ただし、現地側での輸入時には現地の関税が発生します。)一方、日本へ貨物を輸入するときは、原則として関税・消費税が発生し、これを納税しないことには輸入許可になりません。
関税がどのくらいかかるのかは、HSコードごとに定められた「関税率」によって決定します。化学品の関税率はだいたい0~5%程度のものが多くなっています。関税が0%(FREE)のものは、消費税のみの納税となります。
4-1.HSコード(エイチエスコード)って何?
HSコードとは、「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description Coding System)に関する国際条約(HS条約)」に基づいて定められた番号です。
すべての輸出入貨物はいずれかのHSコードに分類され、このHSコードでもって税関へ輸出入申告を行います。輸入の場合はHSコードに基づいて関税率が決定するため、もし誤ったHSコードで申告してしまうと、必要以上の関税を納税することにもなりかねません。そのため、HSコードの分類は慎重に行う必要があります。
HSコードの例)
- アクリル樹脂と有機溶剤をもとにした塗料:3208.20-0004
- 印刷用インク(黒色):3215.11-0006
- ビール:2203.00-0004
HSコードは頭6桁までは世界共通で、7桁目以降は各国が独自で設定して運用されています。つまり、HS条約加盟国であれば世界中のどこでも、同じ貨物であれば基本的には同じHSコード(6桁まで)を利用して通関されることになります。
4-2.関税を少しでも安くする方法はあるの?
輸入する貨物の原産国によっては、特恵関税制度、もしくは経済連携協定を利用することで、一般の関税率よりも低い税率で輸入することが可能です。
4-2-1.一般特恵(GSP)
発展途上国に対して、輸入国である日本が関税で便益を図り、貿易を促進することで経済発展をサポートしようという趣旨の制度です。具体的には、以下のURLに掲げられている特恵受益国を原産国とする貨物に関して、原産地証明書(FORM-A)を取得することで関税が安く、もしくは無税になります。
特恵受益国URL:https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1504_jr.htm
4-2-2.経済連携協定(EPA)
二国間、もしくは多国間で締約された経済連携協定に基づいて、締約国同士がお互いに関税の便益を図り、ともに経済発展していこうという趣旨の協定です。
最近発効された協定では、TPPや日EU EPAなどがあります。具体的には、日本が協定を結んでいる国を原産国とする貨物について、それぞれの協定に定められた様式の原産地証明書を取得することで、関税が安く、もしくは無税になります。経済連携協定を結んでいる国・地域の確認は以下の外務省のページをご参照ください。
外務省HP:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/index.html
5.そもそも通関手続きを業者に委託せず、自分でやっちゃダメなの?
通関手続きを通関業者に委託せず、輸出入者様ご本人が行うことは可能です。しかしながら、これまでご紹介してきたように、通関手続き自体の煩雑さに加え、法令関係やHSコードなど、専門的な知識を要する事項が非常に多いため、通関業者に委託するのが無難であると言えます。
まとめ
いかがでしたか?今回は、通関に関する基本的な知識を紹介させていただきました。多数の法令が絡む化学品(危険品)の輸出入をご検討の際は、ぜひ当社にご相談ください。これまでの経験やノウハウを活かした適切なアドバイスにより、法令を順守した適正でスムーズな通関手続きをサポートさせていただきます。