国際貿易では木製パレットは使えない?木材規制とは
輸出入の際、使用できる木材こん包材に制限があることをご存じでしょうか。加工または処理を施されていない木材は、有害な動植物に寄生されている場合があり、森林保全や生物多様性に悪影響を及ぼす可能性があります。このような木材こん包材の国際貿易上の移動に伴う、有害な動植物が侵入及びまん延するリスクを低減するため、条約によって一定の基準が定められています。今回は国際貿易における木材こん包材の規制について解説いたします。皆様の今後のご手配にこの記事が参考となれば幸いです。
〇 国際植物防疫条約(IPPC)
1952年4月、国際植物防疫条約(IPPC)が発効され、2024年4月時点で185の国と地域が加盟しています。この条約に基づいて定められた国際基準(ISPM)によって、各加盟国は植物検疫措置を制定しています。
〇 国際貿易における木材こん包材の規制(ISPM15)
具体的には、主に生きている木に病害虫リスクをもたらす有害動植物の経路となりえるあらゆる形態の木材こん包材が対象となり、クレート、木箱、荷箱、ダンネージ、パレットケーブルドラム及びスプール/リールのようなこん包材が対象となります。
対象外の木材こん包材
以下の品目はリスクが十分に低く、ISPM15のこの基準から免除されています。
- 全てが薄い木材(厚みが6ミリメートル以下)で作製された木材こん包材
- 接着剤、熱若しくは圧力、又はそれらの組合せで製造された合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード又はベニヤといった加工木材で全てが作製された木材こん包
- 製造工程で加熱処理されたワイン及び蒸留酒用の樽
- 有害動植物が存在しない状態にする方法で加工及び/又は製造された木材から作られたワイン、葉巻き及びその他の商品用の贈答用箱
- おが屑、かんな屑及び木毛
- 貨物車両及びコンテナに恒久的に装着された木製部品
規制対象の木材こん包材を国際貿易でも使えるようにする処理
規制対象の木材こん包材であっても、有害動植物が存在できなくなる下記のような承認された植物検疫処理を施している場合、国際貿易において使用することが可能となります。
- 従来の蒸気又はキルンドライ加熱室を利用する熱処理
- 誘電加熱を利用する熱処理
- 臭化メチル処理
- フッ化スルフリル処理
特に一般的なのは1.の蒸気による熱処理で、一般的に燻蒸処理と呼ばれます。
これらの処理は具体的な方法と対象の木材がそれぞれ定められていること、加えて処理を施した木材こん包材にはその証明としてマークの刻印が必要となることに注意が必要です。
処理を証明するマークとその運用
植物検疫処理済みであることを示すマークは上記のような形をしています。左側にIPPCのシンボルマーク、右側に国を示す2文字のコード(XX)、生産者/処理実施者を示す3文字のコード(000)、どのような処理を行ったか示す2文字のコード(YY)から構成されます。
このマークを対象の木材こん包材へ見やすい箇所に外側を向けて刻印する必要があります。
〇当社で使用している主な梱包資材、ラッシング資材の材質
最後に、当社で使用している資材について簡単にご案内します。パレットは梱包用とラッシング用のどちらもプラスチック製のものを使用しています。当然木材規制の対象外です。ラッシング用に使用している角材とコンパネは木製のものを使用していますが、角材は合板素材、コンパネはベニヤ素材のものを使用しており、ISPM15の対象外にあたります。お客様から納入いただいた貨物の梱包資材についても当社にてISPM15の要件を満たすかどうか確認したうえでご手配をさせていただいておりますので、ご安心ください。
〇まとめ
国際貿易では様々な規制や規則があります。貨物に関する規則だけでなく輸送に関わる資材に関する規則まであるとなると、把握が追いつかずお困りの方もいらっしゃるかもしれません。
貨物の輸出入に関することでご不明な点がございましたら、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。